腰椎椎間板ヘルニアの治療法5選!症状、原因、ヘルニアは治るのか?
2019.08.11

「腰が痛いので、ヘルニアなんじゃないかと不安に思っている」
「椎間板ヘルニアと診断されて、なかなか良くならないので何かいい治療法があれば知りたい」
このブログは、腰椎椎間板ヘルニアを治したいと思っているあなたの為に記事を書きました。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
通常の場合は、腰痛や『ぎっくり腰』のような症状が現れ、数日後にどちらかの下肢に放散される痛み(しびれ)が起こるとされています。この痛み・しびれは激痛の事があって「満足に動くことが出来ない」「睡眠の妨げになる」といったこともあります。多くの場合痛みやしびれは2~3週間でピークを越えることが多く、徐々に痛みやしびれが和らいでいく事が多いとされています。
基本的に足の痛みやしびれは片方のみが典型例ですが、両足に症状が出る場合には排尿排便障害(膀胱直腸障害)が認められる場合もあります。その場合には、一度医療機関を受診するようにしましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
悪い姿勢や不安定な体勢での動作や作業で腰に負担がかかるような方や、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなるという事は知られていますが、あまり関係ないという話もあるので、はっきりとした原因はわかっていないのが現状です。特に腰に負担がかかるような生活をしていない場合でも椎間板ヘルニアになることがあるので、誰でも起こる可能性のある病気となります。
悪い姿勢での動作や作業、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
腰の椎間板ヘルニアについては、腰に負担がかかる作業が多い人に起こることが多いという話がありますが、あまり関係ないという話もあります。特に負担がかかるような作業をしていない方でも椎間板の変性が起こり椎間板ヘルニアになることがありますので、誰にでも起こる病気と言えます。
腰椎椎間板ヘルニアの有病率についても詳細も明らかになってはいませんが、20代~40代の男性に多く見られ腰の4-5番目と腰の5番目-仙骨の1番目に好発すると言われています。
腰椎椎間板ヘルニアは治るの?
腰椎椎間板ヘルニアは以下のようなことが言われています。
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)より引用
腰椎椎間板ヘルニアは自然退縮するものがある.ヘルニアのサイズが大きいものや,遊離脱出したもの,MRIでリング状に造影されるものは高率に自然退縮する.
腰椎椎間板ヘルニアが自然に退縮する割合およびその時期を明確にした報告はないが,2〜3ヵ月で著明に退縮するヘルニアも少なくない.
つまり、ヘルニアが大きく離脱したものや、MRIで発見できるものは高確率で自然に小さくなることがあり、多くの場合は2~3ヶ月で小さくなるということです。
ですから腰椎椎間板ヘルニアは自然と治ることもあるというわけです。
腰椎椎間板ヘルニアを治す治療法
日本の腰椎椎間板ヘルニアガイドラインによると「薬物療法」や「物理療法」が推奨されているのですが、アメリカの腰痛外科学会では以下の治療法を中程度認めています。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法① マッサージ
日本の腰痛診療ガイドラインではマッサージや代替医療に否定的です。ですがこのような研究レビューもあります。
・慢性の腰痛患者の足のリフレクソロジーと通常のマッサージを比べたところ痛みの差は示されなかった
・亜急性から慢性の腰痛患者では、マッサージは他の治療法(脊椎操作・運動療法・リラクゼーション・鍼治療・理学療法)などと比較したところ、効果は小さいものの短期間の痛みの緩和と機能改善されることが示された
・亜急性から慢性の腰痛の患者の短期間の痛みに対してマッサージと他の治療法(運動療法・痛みの教育・通常のケア)の組み合わせが他の治療法単独よりも優れていることを示した。
急性の場合を除けば、慢性的な腰痛に対しては効果があることがわかっています。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法② 運動療法
急性期には運動療法が効果的という報告はないですが、慢性期に関しては週1~3回行うことが推奨されており、保存療法に比べて痛みや機能改善、欠勤日数の減少、職場復帰率への効果が認められています。
運動に関しては、ストレッチやジョギング、筋力強化、体操療法などがありますが強度ではなく継続することが大切と言われています。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法③ 鍼治療
日本の腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインには鍼灸に対しては記載がされていません。ですが、アメリカの場合では「非薬物療法」を推奨しているため薬物療法よりも鍼治療を行なうことがあり、WHO(世界保健機関)でも鍼の効果は認められています。
・鍼治療直後と最大12週間後まで偽鍼治療と比較したところ中程度の痛みの緩和が認められたが、機能の改善は認められなかった
・鍼治療終了時に鍼治療を行なわない場合と比較して、痛みの強度と機能の改善に関連していることが示された。
・薬物療法(MSAID、筋弛緩薬・鎮痛薬)と比較して痛みの軽減と機能の僅かな改善が示された。
このような結果も出ているので、技術は問われますが鍼治療は椎間板ヘルニアに効果的であることが記されています。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法④ 脊柱マニュピュレーション
腰椎椎間板ヘルニアに対する『脊柱マニュピュレーション』は、急性の腰痛や坐骨神経痛を訴える患者さんに対して有効性を示す報告が多くされています。
しかし、対象が腰椎椎間板ヘルニアのみではなく腰痛患者を対象としていることや評価法が独自のものが多いので、信頼性を高めるためには更なる検討が必要であるともされています。
また、脊柱マニュピュレーションと他の治療を組み合わせで1.3.12ヶ月で大きな痛みの緩和、機能改善をもたらしたという研究結果もあります。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法⑤ ヨガ
ヨガは治療法とは言えないと認識される場合もありますが、以下のような研究結果も出ています。
・24週間で通常のケアと比較したところ、適度に低い痛みのスコアと機能改善をもたらすことが示された。
・ヨガは運動療法と比較して痛みの強度がわずかに低下することが示された。
・ヨガは腰痛教育と比較したところ、短期的(12週以下)に痛みの強度が減少したが、長期的(約1年)な痛みの強度は減少することなく、短期的・長期的な機能改善はわずかに増加したと示された。
自分自身で痛みを減らしたい場合はヨガもいいのではないでしょうか?
腰椎椎間板ヘルニアで更にいい治療法はあるの?
非薬物療法で最も高い支持を受けている治療法が「認知行動療法」と「集中集学的リハビリテーション」の2つです。
認知行動療法
認知行動療法は、行動療法・論理療法・認知療法・心理療法の技法の総称の事を言います。この鎮チ行動療法でも以下のような研究結果が出ています。
・認知行動療法およびその他の心理療法(腰痛教育、問題解決トレーニング、対処療法、画像、リラクゼーション、認知痛コントロールおよび運動)の組み合わせが痛みの強度と中程度関連していることが示された。
・通常の治療と比較してマインドフルネスに基づくストレスの軽減が慢性腰痛の効果的な治療法であることを示した。
マインドフルネスとは、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と説明される通り、客観的に捉えるような心理的過程です。
このように考え1つでも腰痛に効果的であることがわかっています。
集中集学的リハビリテーション
日本ではあまり行われていませんが、医師だけではなく理学療法士・作業療法士・臨床心理士などが積極的に関わって痛みに対する集学的なリハビリ治療が行われます。集学的治療の研究結果では以下のような記事があります。
・集学的なリハビリテーションが通常のケアと比較した結果短期的(3ヶ月未満)に中程度痛みを低下させて、長期的な痛みの強度と障害はわずかに低下させた。また、仕事復帰への差はなかった。
・集学的リハビリテーションは、リハビリテーションをしないよりも短期的に痛みの強度と障害と関連していることが示された。
・理学療法と比較して機能が改善し、集学的ではないリハビリテーションと比較したところ仕事復帰する可能性が高いことが示された。
このように何故痛みが出ているのかを自分自身が理解したり、心理的要因を取り除くことで早期に仕事復帰することが出来、痛みや機能の改善が出来るとされています。
主に集中集学的リハビリテーションは以下のようなことがなされています。
・基礎体力測定、職場の実際の動作分析・評価
・療法士による筋力強化、ストレッチ、有酸素運動、職場復帰の為の実際の動作指導
・医師、療法士、臨床心理士による慢性痛の対応・心理的因子と痛みの関連・運動療法の効果の講義
・個人に合わせたトレーニング
このように様々な視点から1人に対して治療を複合的に行っていく治療法になります。
腰椎椎間板ヘルニアは手術が必要?
腰椎椎間板ヘルニアは約80~85%は自然に軽快すると言われているので、まずは保存療法が原則となるので、すぐに手術が必要な場合は稀です。しかし手術が行われることもあるので、手術の可能性がある(手術が検討される)ものは以下のような場合です。
・保存療法を2~3ヶ月行っても効果がない
・痛みの発作を繰り返す
・痛みが強烈
・下肢の運動麻痺(筋力低下)が著名
・膀胱直腸障害
これらの症状があった際には手術が検討されます。
しかし手術をしてもこのようなことが言われています。
・保存治療と手術治療を比較したところ、症状に関しては手術治療の方が長期的にも良好だが、10年後にはその差は減少する
・数週間痛みが継続した片を対象として、保存治療を継続したグループと早期に手術を行ったグループを比較したところ、長期的に差が認められなかった。
つまり、短期的には有効でも長期的には変わらないという事が明らかとなったのです。なので手術を行う場合はタイミングが大事で「今すぐ何とかしたい」という方が当てはまるのではないでしょうか?
まとめ
日本の治療とアメリカが推奨している治療は違います。それには「国民皆保険」が関わっていることが考えられます。日本はまず「痛み止めや湿布」といった保険治療を勧めますが、アメリカの場合は自費治療が一般的で鍼やマッサージといった方法で効果が無かった場合に推奨度は低いけれど「痛み止め」を処方するくらいです。
文化の違いはありますが、薬に頼りたくない方は保存治療や理学療法といった手技療法を受けることも良いと思います。しかし、しっかりとした鑑別があってこその治療法となるので、まずは命の危険性が無いのか整形外科を受診するようにしましょう。整形外科と整骨院を併用して治療することもアリではないでしょうか?
参考文献
『腰椎椎間板ヘルニア』日本脊髄外科学会
『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン』監修:日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会
『急性、亜急性、および慢性腰痛の非侵襲的治療:米国医師会の臨床診療ガイドライン』